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第1章 〜旧世界の崩壊と新世界の勃興〜 

600年ほど前に起こった「審判の季節」と呼ばれる隕石群の飛来に端を発する地殻変動をはじめとする地球規模の大災害。

人類はわずか3割を残し滅亡の危機を迎えた。

残った人類は歴史を早回しするように奇跡の復興を遂げるが、それまでの世界のパワーバランスは一変、再び各地に起こった国家は各々世界を手中に収めようと大戦国時代が始まった。そんな中かつての歴史同様、旧イタリア半島の都市国家から現れたノヴム・ロマエ(新しきローマ)を標榜する後の大英雄が周辺諸国をまとめ上げ、初代ローランシア皇帝を名乗りフェイエトール帝国を興す。未だ混乱する世界の隙をつくように次々と領地を拡大していったフェイエトール帝国に対抗するため、世界3大大国が中心となり国家連合を発足。数年後、かつてない超巨大統治体制「ワイズ連邦」を発足する。

 

そうして世界は二大勢力の元、微妙なパワーバランスを保ち小康状態が続いていたが、旧世界から続く化石燃料の枯渇が問題視されるようになると、世界を二分する勢力は再び周辺各国を巻き込んで残り少ない利権を賭けたエネルギー戦争に突入。長期にわたり消耗戦の様相を呈していった。 

第2章 〜新たなエネルギーの発見と更なる戦乱〜

 

そんな中、大災害の原因となった隕石に含有していたと思われる地球由来ではない未知の鉱石「ラウズ鉱石」が世界各地で発見される。 

この鉱石を精製することで生まれるまったく新しいエネルギー「ラウジール」は、安全かつ化石燃料をはるかに上回るエネルギー効率であることが発覚、枯渇しかけていた化石燃料にとって代わる新エネルギーとなる。

地球を崩壊寸前にまで追いやった隕石群が、それ以前から人類が文明を継続していくための大命題であったエネルギー問題の救世主となったのはなんとも皮肉な話だが、ともかく両陣営を中心に世界中がこぞってラウズ鉱石の採掘に躍起になった。これにより資源の枯渇問題は解消され、それに起因する世界を二分するエネルギー戦争も終息に向かうかと思われた

 

だが人類はどこまで行っても争いを止められない愚かな生き物であった。 

今度はラウジールを独占、利権を我がものにしようと更なる争いが繰り広げられたのである。

更に長く続いた帝国、連邦の2大陣営にも歪みが生じ始め、両陣営内でも領土内に採掘地域を持つ領地や国家を中心に独立、覇権を巡る争いも頻発するようになった。

第3章 〜そして現れる「クリプテッド(幻獣)」〜 

 

採掘場に国家を上げての事業として派遣された巨大企業から一攫千金を夢見る一般人まで、旧世紀のゴールドラッシュさながらに各地から人が集まり始めると、恐るべき異変が起き始める。

まるでラウズ鉱石を守るように現れる異形の生物「クリプテッド(幻獣)」の存在である。

 

クリプテッドはその地域に時代を問わず生息していた原生生物を模したものから伝説や文献に残るモンスターの姿をしたもの、未知の外観をしたものなど様々だが、最大の特徴はそれらがまるでラウズ鉱石でできた美しい半透明の彫刻のようだということだった。

大半の個体は上記のように半透明の身体で知性も野生動物並みであったが、調査の結果稀に体表に色が付いた個体、通称「色付き」の存在も発覚。この色付きは通常個体よりも高い知性を持っていることが確認されており、後述の神獣種は滅多にその姿を表さないが、高い知性を象徴するように極彩色を身に纏っていると言われる。

採掘場近隣市街地に現れるようなクリプテッドは小型で知能も低いものが多かったが、採掘場深奥へ向かうほど巨大で知性も高い個体が出現するようになっていく。 人類の採掘地拡大に呼応するようにクリプテッドもその数を増やすかのようだった。

第4章 〜ラウズ鉱石採掘用多目的重機「レコンビネーター」と「E-S(アインシュタイン)ユニット」〜

 

クリプテッドは様々な形状や特性を持つものが確認されていたが、外観、サイズなどから概ね

·擬原生種(時代を問わず元々地球に存在している生物の外観を模したもの)

·偶像種(各地方に古来から伝わる挿話や神話、伝説由来のモンスターを模したもの)

·神獣種(サイズ、形状を問わず高い知能を持つ種)

·幾何種(生物由来ではない無機物様のものや地球由来でない形状のもの)

に大別された。共通するのは「瘴気」とよばれる有毒な空気を身にまとっていることである。

短時間吸い込むだけではすぐに症状は出ないが、長期に渡り吸い込むことで徐々に肉体を蝕んでいく。だが、この瘴気はラウズ鉱石によって中和されることが判明しており、鉱石の近辺にいるかぎりは影響を受けないのだが、その中和半径は非常に狭いものであった。そして閉鎖空間である採掘現場内では鉱石に辿り着くまでは濃密なガスのように瘴気が充満しており、更に鉱石に近づく者は無作為に襲ってくるクリプテッドに対し何らかの対応策が必要とされた。

 

そこで厚い装甲で覆われたコックピットを持つ高い中和機能を持つ重機が必要となったのだが、その重機の開発を行ったのが科学力の向上を国是とし、その高い技術力で世界復興に大いに貢献した結果、連邦、帝国を含めた当時の有力国家から不可侵の永世中立国に認定されていたキャスレーン共和国であった。キャスレーンの技術者たちによってラウジールを燃料とし、コアユニットを中心に採掘環境に合わせて四肢のモジュールを交換可能な人型重機が開発された。それが汎用プラットフォーム「E- S(アインシュタイン)ユニット」をコアとした採掘用重機「レコンビネーター」である。

この柔軟性に富んだ重機の登場により採掘現場の様相は一変、作業効率は劇的な向上を見せるとともに、それまで立ち入ることが出来なかった深奥部にまで採掘範囲は拡大していった。

第5章 〜クリプテッドの生態 〜

 

そしてクリプテッドの生体が調査されるなか、人類にとっても看過出来ない最大の特徴が明らかになる。 

それはクリプテッドが「ラウズ鉱石を摂食する」珪素生物ということである。ただでさえ貴重な鉱石を巡って人類同士が争っている最中に、異形の生物であり鉱石の守り手であるクリプテッドはその鉱石を糧とする言わば第三勢力だという事が発覚したのだ。 

 

こうして新たなエネルギーの源たるラウズ鉱石をめぐり2大勢力を中心とした人類同士+クリプテッドという三つ巴の新しい戦場の在り方が生まれていく。 

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第6章 〜万能兵装システム「ユングフラウユニット」とリーパー、グリムリーパーの誕生 〜

 

一方、レコンビネーターは世界中の採掘地で運用される事になり、そのシェアをほぼ独占していたキャスレーンであったが、モジュール自体はあくまで採掘用重機でありクリプテッドを直接撃退出来る兵器ではなく、襲撃による犠牲は少なくなかった。現場からはE-Sユニットのオプションとして、作業用だけではなく防衛のための攻撃特化型モジュールを望む声が多く上がっていた。

 

しかし。いくら対クリプテッド防衛用と銘打ったところで兵器は兵器。非戦を謳う中立国であるキャスレーンが兵器を開発、生産しているとなればそれは武力供与と見なされ、ともすれば現在の立場を維持出来なくなってしまう。

レコンビネーターの成功をやっかんでキャスレーンの失脚を待ち望んでいる国家は少なくなかったのだ。

しかしこれを好機と捉えた一派があった。当時既に世界のライフラインエネルギーとなっていたラウジ

ール採掘産業に於いて、マスターピースであるレコンビネーターのパテントという経済的なアドバンテ

ージを握ったにも関わらず、永世中立国という立場が戦争という一大産業への介入を阻んでいた事から

思うように国力の向上が計れないことを遺憾に思っていたキャスレーン国内の改革推進派である。

そこで彼らは連邦非加盟国サルーデに巧妙に繋がりをカムフラージュした武器メーカー「D&H社」を

設立し、レコンビネーターのサードパーティー製品として武器モジュールの開発と生産を開始した。

いわば戦闘用レコンビネーターである。

結果この試みは大成功を収め、世界中のクリプテッドへの対応に苦慮していた採掘現場からも絶大な

評価を得ることになり、傭兵を中心に用心棒的な役割を専門にこなす新たな警護ビジネスも誕生した。

こうして表向きは非戦、中立の立場を保ったまま武器開発を進められる環境を作ったキャスレーンは、

いずれその立場をかなぐり捨てて超産業大国として世界の覇権を握る一角として躍り出る為の素地を

作っていった。

 

更にキャスレーン改革推進派の暗躍は続く。当時兵の練度から帝国に劣勢を強いられていた連邦軍は、

ミリタリーバランスを一変する兵器の開発を画策するも技術、アイデア面双方で難航していた。これ

に目をつけた改革推進派は、この柔軟性に富んだシステムをD&H社を通じて軍事用にリパッケージ

して売り込んだのだ。このプランと共に技術供与として赴く予定のメンバーの中には、キャスレーン

随一、ひいては世界屈指の科学者と言われながらも危険な軍事思想故に国内を追われたハウエル・A・ギース博士の名前もあった。博士はキャスレーンの表舞台から姿を消した後も改革推進派の中心メンバーとして暗躍していたのだった。D&H社の設立経緯や博士の存在など、キャスレーンとのきな臭い繋がりを薄々感じながらも、それは当時の連邦軍にとって得難い魅力的な提案であった。そして彼らは連邦加盟国内に拠点を置くネルシオンインダストリーと共にE-Sユニットの基本システムを兵器として更にブラッシュアップさせ、戦局によって四肢ユニットを換装することで柔軟な運用が可能な兵装プラットフォーム「ユングフラウユニット」を完成させる。

 

ユングフラウユニットの特徴はラウズ鉱石を超高密度で結晶化させたラウズ結晶体由来のICチップ、通称R-ICを組み込んだコアシステムを機体コントロールに使用している事である。 ラウズ結晶体は電子部品の半導体素材としても非常に優秀である事が実証されていたが、ギース博士たちの技術力で更に超高密度結晶化する事で既存の同サイズのチップに数十~数百倍の処理速度を持たせる事に成功。コアユニット自体の小型化に加えて、交換可能な四肢のユニットを非常に高次元なレベルで制御する事を可能にした。 当然ラウズ鉱石由来のR-ICは瘴気中和作用も果たしていたので対クリプテッド兵器としても有効だった。

 

そして連邦軍はユングフラウユニットをコアとする四肢モジュールを用途や戦局に応じて大別して2ライン開発。「数」を必要とする戦場向けの小型汎用機動兵器「リーパー」と、「質」を必要とする戦場向けの、更なる機動力と火力を備えた大型人型決戦機動兵器「グリムリーパー」の誕生である。 

 

細々と残っていた化石燃料、またはそれらをラウジールに置き換えたものを動力源とした従来兵器は言うに及ばず、武装化したレコンビネーターとも比較にならない機動性と精密性、行動時間、コアユニットを共通にする事での各機体開発コストの削減、戦場での連携、前線レベルでの四肢モジュールの交換による戦局への柔軟な対応など、既存の兵器体系を一新する兵器の登場により、世界のパワーバランスは一変、同時にクリプテッドへの積極的侵攻も開始される。 

第7章 〜エグゾスケルトン計画と宝剣(バルムンク) 〜

 

一方、リーパー、グリムリーパーという革新的な兵器の開発に成功した連邦に水を開けられたフェイエトール帝国でも新たな戦力の開発が進行しつつあった。

 

当時生身で戦う騎士団を多く有し、兵の練度に於いて連邦を凌駕していたフェイエトール帝国だったが、その圧倒的物量には苦戦する戦況も多く、更には対クリプテッド戦に於いても少なくない人的被害に苦慮していた。逆に言えば帝国の強さは兵士1人1人の練度の高さに拠るところが大きかったからこそ、人的被害は看過出来ない問題だったのである。そこで帝国軍の頭脳である科学技術局内に「兵士1人1人の戦力の向上を図る」プランを広く打診していた。

その中の一つ、サイバネティック技術の分野に於いて優れた技術を有し、主に負傷した兵士の欠損した四肢を補う義手や義足の開発を行っていた帝国軍科学技術局第14支部、通称「再生局」は、甲冑自体に制御システムを組み込むこととサイバネティック技術の応用で武装の制御、着用者の動きをサポートし、着用者の戦闘力を飛躍的に向上させる強化外骨格スーツの開発「エグゾスケルトン計画」を立ち上げた。

このプロジェクトで完成したスーツは一定の性能は見せたものの、肝心の制御システムが大型化してしまい、運用面での負担が大き過ぎて量産化に向くようなものではなかった。

そのためこのまま制御システムの小型化を進めるか、別のプランに舵を切るかの岐路に立たされていた。

 

そんな折、暗躍を続けるキャスレーン改革推進派が極秘裏に再生局にコンタクトを求めてきた。連邦軍内に於いてリーパー、グリムリーパーの開発に一応の成功をおさめた改革推進派だったが、本来意図していた性能には到底達していなかったのだ。実際当時はコアシステムの脅威的な処理能力を効果的に使用出来ておらず、まだまだ余力のある状態だった。原因はユングフラウユニット本体ではなく四肢モジュールの方で、駆動系や材質の耐久性が処理能力の限界について行けず、OSの方でセーブをかけてしまっていたのである。それらを解消するモジュールの開発に行き詰まっていた状況で、革新的なブレイクスルーをサイバネティック技術に求め技術提供を請う為だった。

対して再生局が目を付けたのは改革推進派のR-ICに代表されるラウズ鉱石の超高密度結晶化技術。当時ラウジール関連の科学技術転用に遅れをとっていた帝国科学局が喉から手が出るほど欲しかった技術であり、軍部に於いてどちらかと言えば日陰の身であった再生局が他局を出し抜く好機でもあった。そして何よりこの技術によってもたらされる超小型制御システムこそまさにエグゾスケルトンを完成形へと導くピースだったのだ。

連邦軍の主力兵器の性能向上に繋がる技術を敵対国である帝国に求めるなど非常識極まりない話だが、受ける方も同様である。無論互いの上層部は預かり知らぬ交流であったものの、科学者、技術者としては敵国兵器の性能向上よりも自身の知識、技術の向上の方が遥かに重要で、その出自など瑣末な事だったのである。

互いの利害が一致した再生局は条件を承諾、人員の出向と技術の交換が行われた。

 

結果としてスーツに組み込む予定だった制御システムは想定を超えてナノサイズのチップにまで小型化することに成功、それを装着者の体内に埋め込むことにより、装着者の意思をダイレクトにスーツに伝達する「リンケージシステム」の開発に成功した。通称「宝玉」と呼ばれた体内に埋め込んだナノチップでサイバネティック技術の粋を結集した強化外骨格スーツ「エグゾスケルトン」を制御、超人的な戦闘を可能とする戦士が誕生したのである。

本来であればスーツ内に収まるサイズの制御システムの完成を目指していた再生局の面々だったが、前述のように更に一歩進んだ想定を超える小型化を提案、実現まで導いたのは推進派からの出向組のアイデアであった。

 

そして宝玉を埋め込まれた戦士たちは伝説の宝剣になぞらえて「バルムンク」と呼ばれるようになった。

 

 加えて副産物としてエグゾスケルトンの制御システムを応用した自立式AI搭載型サイバネティックボディ「DOLL」も開発される。

 

これはエグゾスケルトン着用を前提としたサイボーグのようなもので、マスター契約を結んだ人間からのコマンドによって運用される戦闘ユニットである。ミッションごとに部隊長(マスター)とスレイブ契約を結びアンデッドソルジャー(不死の兵士)として活躍する。

人員の補強も懸念事項だった帝国にとってこの副産物はまさに渡りに船であり、こうして帝国軍も新たな剣を手に入れ、息を吹き返したのだった。

 

ちなみにエグゾスケルトンとDOLL開発という功績を上げた再生局は輝かしい未来が待っている筈であったが、どこからかその功績の代償とも言える他国への技術供与をリークされてしまった。

技術情報漏洩はすなわちスパイ行為に当たり本来であれば極刑相当であったが、その多大なる功績を以って刑罰は免除されたものの、以降は新規の研究開発などは許されず、最低限の活動のみを許された飼い殺し状態となってしまった。

第8章 ~連鎖進化~

 

一方、帝国科学局から最先端のサイバネティック技術を得た推進派は、コアシステムの性能を限界まで引き出すユングフラウユニットの四肢モジュールを完成させる。

 

それらは装甲材質、駆動伝達方式などが一新され、耐久力、反応速度、全ての面に於いてこれまでとは一線を画す破格の性能を獲得した。

だが、ここでまた新たな問題が浮上する。ユングフラウユニットの性能を十二分に発揮出来るようになったこの高性能モジュールは、その性能故に常人では到底扱えないほどにピーキーなものになってしまったのである。

そこで今度はパイロット側にもこの性能に対応出来るような手段を模索する事となったが、答えは意外にもすぐ近くにあった。

帝国のリンケージシステムである。

パイロットにナノサイズのモジュールリンクデバイスをインプラント施術、コアシステムと専用スーツを介してパイロットと四肢モジュールをダイレクトリンクさせることで、ユングフラウユニットと新たな四肢モジュールの性能を引き出す。これがシンセティック・モーション・システム(SMS)。言わばエグゾスケルトンの代わりに四肢モジュールを扱うようなものである。

 

ユングフラウユニットはここへ来てやっと本来求めていた性能を発揮することとなる。

最終的には「数」を利とするリーパーの方にはこれ以上の大幅な性能向上は不要とされ、グリムリーパー用の四肢モジュールの開発に絞られることになるが、一般のパイロットにはまともに乗りこなせない性能差故に既存ユニットとの差別化することになり、このリンケージシステム技術を施したパイロット、通称「リンカー」専用の四肢を装備したグリムリーパーをαグレード、それ以外の既存システムのグリムリーパーをβグレードと呼称することになる。

 

余談だが、自身の肉体に近い感覚的な操縦が可能になったこのαグレードモジュールは、より人型に近いバランスになっているのが外観的な特徴である。

 

ただ、αグレードモジュールはそれなりに高コストな上にパイロットの処置、練度も必要とされるため、比較して性能は劣るものの戦力としては十分及第点であったβグレードの開発も継続されることとなる。とはいえこの機会に得た一部の性能がフィードバックされたβグレードも以前とは別物の性能で、むしろ兵器としてはピーキーすぎるαグレードよりも習熟訓練も短く安定した性能を誇り、リーパーモジュールとの相性も良いβグレードを好む兵士も新兵、ベテランを中心に数多く存在し、結果として現在に至るまでグリムリーパーモジュールの生産数割合は圧倒的にβグレードが占めることとなる。

第9章 ~目覚める第三勢力の野望~

 

祖を同一とする兵器、リーパー、グリムリーパー、そしてエグゾスケルトンが戦場及び対クリプテッドの主役となり、再び二大陣営が武力で世界を二分するかと思われた頃、一つの野望も目を覚ます。

これらの兵器の産みの親とも言えるキャスレーン改革推進派の国内に於けるクーデターである。

長期に渡り平和に慣らされ、ろくな武器を保持しない穏健派相手のクーデターはいとも簡単に成功し、政権は推進派が掌握。

手始めに手駒であったD&H社、連邦の御用聞きと成り果て内部に不満を抱えていた(そのようになるよう根回ししていたのだが)ネルシオンインダストリー両社を買収、合併し「DHネルシオン」を新たに設立。リーパー、グリムリーパーの開発に当たらせた。

更に帝国で飼い殺し状態になっていたエグゾスケルトンの開発母体、再生局の主要メンバーに秘密裏にコンタクトを取り集団亡命させ、彼らを中心開発メンバーに据えたエグゾスケルトンメーカー「カテラズマカンパニー」を設立。(実は飼い殺しの元凶となった技術情報漏洩のリークもこの時のために仕組んだ推進派工作員の仕業だった)後に後世に語られる事になる社名を冠したエグゾスケルトン黎明期の名機「カテラズマ」を生み出すことになる。

同時に国有企業としてこれらの兵器の開発、生産を行なっていくことを内外に向けて宣言すると共に、レコンビネーターのパテントで得た巨額の資本を元に世界でも有数のPMC(民間軍事会社)を国内へ誘致。自国で開発される最新兵器を保有する二大陣営にも引けを取らない戦力とした。

 

こうして中立、非戦の仮面をかなぐり捨てたキャスレーンはDHネルシオンを中心にこれまでレコンビネーター産業が中心だった国内メーカーの生産ラインを兵器開発を主とする軍需産業へと切り替え、連邦、帝国で得た両技術をもとにこれらの兵器開発、生産を国家事業とする一大軍需産業国家「キャスレリア」へと生まれ変わる。

 

連邦、帝国ともにこの新国家誕生に怒りと脅威を覚えたが、そもそも両陣営こそがクーデターの遠因を作った元凶でもあり、各々主力兵器の開発経緯に後ろ暗いところがあったこと、彼らに積極的な武力侵攻の意思はないこと、そして彼らが生み出す兵器はあくまで人類共通の敵であるクリプテッド殲滅を目的としたもの、つまり人類が共有するべき兵器であり、いずれかの勢力に加担するものではないとの意思を示す為、彼らが開発、生産する全ての兵器のソケット規格も統一することを発表するに至り、両陣営にとってこれに異議を唱えて近い将来自分たちと同等の性能を持つ兵器を保有するであろう他国の無用な反感を買うことは得策ではないと判断せざるを得ず、これを黙認するしかなかった。

加えて。この新国家と彼らの望むように「商売相手」として相対する事で、これまで脅威だった互いの陣営の主力兵器を自陣営にも導入することが出来るという打算もあった。

第10章 ~戦士たち、そして現在へ~

 

こうして新国家誕生を契機に連邦にもエグゾスケルトンが、帝国にもリーパー、グリムリーパーが配備されることとなり、しかも両軍が共通規格の兵器を主戦力とするナンセンスな戦場が生まれることになる。更にはどちらにも属さないその他多くの国家もこれらの兵器を手に入れることが出来るようになった事で、後発の開発、製造メーカーも多く誕生し、エグゾスケルトン、リーパー、グリムリーパーそれぞれに様々な新型機が生まれていった。

 

そしてそれらの使い手はもはや軍にとどまらず、民間企業、傭兵、果ては一般人にまで波及し、民間の訓練学校まで存在するに至り、二大陣営が武力で世界を二分化するという明確な勢力図は崩壊、再び混迷を極める戦国時代が幕を開けたのである。
 

リーパー、グリムリーパー、バルムンク、DOLL、そして守護者クリプテッド。

巨人の戦場「ティタノマキア」で戦士たちが数多の物語を紡ぎ出す。。。

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